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「たまごのおもてなし」 
─できごとのデザインと評価についての試み─

2003.7.11
文責:佐藤優香

■ できごとのデザインと評価

 本ワークショップでは、子どもたちが自分たちの活動をデザインし、その活動を評価するような視点を育むためのきっかけとなるような活動(ワークショップデザイン)を提案したい。

背景

 総合的な学習の時間の導入にともない、教科の枠にとらわれない新たな授業の在り方が求められるようになってきた。平成10年に告示された新学習指導要領によれば、総合的な学習の時間においては、「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探求活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにすること」というねらいを持って指導することが示されている。すなわち、子どもの自主的な活動を中心にした授業を通して、さまざまな能力を身に付けていくことが要求されていると言えるだろう。

活動のデザインと評価

 これまでの教科書を用いた伝達型の授業では、教育課程に沿って教師が授業をデザインし進行してきた。しかし、子どもが主体的に授業を進めていくためには、授業そのものを子どもたち自らがデザインし、かつ評価する視点を持ちながら自分たちで進めていくことが肝要であると考えられる。
 ここでのデザインとは、授業という時間枠のなかでどのような経験の可能性があるかを組み立てることである。また評価とは、子どもの習熟度をはかることが目的ではなく、子どもたちが活動をデザインするに際して意図したことが実現されたかどうかを子どもたち自身が確認するための装置であり、よりよい活動内容となるようにその都度デザインに改良を加えていくための客観的な指標を得るために行うものと考える。すなわち、授業のフォーマティブエバリュエーションを子ども自らが行うことを意味している。評価の視点を持つことで、子どもたちは自らの経験をふりかえり意味づけることとなるだろう。

個人の評価

 総合的な学習の時間についての課題として、授業の在り方と同じく関心が寄せられているのが、児童の習熟度にたいする評価の問題である。新学習指導要領のなかで子どもが身に付けることを期待されている能力を評価するということは、「なにができたか」を問うことだけでは計ることはできないのではないだろうか。また、そもそもこうした能力は、即時に且つ量として計ることができるものでもないだろう。ここでは、個人評価の方法を探る手がかりとして、自己の学習活動を活動者自らが他者へ伝えること─なにを成そうとし、そのためにどのような過程を経て達成を目指したのか─を活動内容に組み入れることとする。

■ ワークショップのデザインとその意図

本ワークショップは、大きくわけて以下の4つの活動から成る。
1. もてなしの一例としてスタッフから卵料理でのもてなしを受ける。
2. 自分たちがもてなす側になるための試作と評価を行う。
3. 評価にもとづき計画の修正を行ったうえで、自分たちが他者をもてなす。
4. 自己のもてなしについての客観的なデータを集めて、活動のプロセスとともにまとめる。

「もてなし」のデザイン

 このワークショップでは、子どもたちに「もてなし」をデザインしてもらう。具体的な活動としては、各自が工夫をこらした卵料理を家族にふるまう。「もてなし」をデザインすることで子どもたちは、どのような方法で調理するか、どのような場(しつらい)を用意するか、どのようなタイミングで料理を提供するかといった、もてなしの方法、空間、時間の流れを考えることになる。これはすなわち、あるできごと、ある活動をデザインすることにほかならない。
 自己の活動を評価する視点をもつためにも、「もてなし」という自分だけでは成立し得ない、他者とのコミュニケーションによって自己の活動を省みることのできる活動を行うことにした。そのもてなしにこめられた思いが、もてなしを受けた相手に伝わるかどうかの形成的評価を子ども同士で行い、計画を修正していく。また、もてなしを受けた相手にも思いが伝わったかどうかの調査を行うことで、自らの活動を自らの手で評価するのである。
 このように、このワークショップは、子ども自らが自己の活動を形成的に評価しながらデザインしていくことをめざしている。先にも述べたように、こうした活動を通して、やがては子ども自らが自己の学び(授業をはじめとしたさまざまな活動)をデザインしていくことができるようになることにつながると考える。

「たまご」という素材

 このワークショップは、卵料理をつくることを軸にして展開される。素材として卵を採用したのは、子どもたちにとって身近であること、さまざまな調理方法があること、単品で用いてもひとつの料理として完成することなどがあげられる。素材を卵のみに限定することで、より創意工夫がなされると予想する。

「Myアルバム」の作成と共有

 各自の活動内容は、ポラロイドカメラで撮影した写真を自由にレイアウトして作成する「myアルバム」という形でまとめられる。こうして、2日間の活動を形にする行為を通して、経験が意味づけられる。またこれらを印刷し参加者に配布することで、ひとりひとりの経験が全員に共有されることにもなる。

当日のようす:スライド 1日目…試作品を作ってみました。
2日目…おもてなし本番です。


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